モテないし、ちょっと参詣するわ 第六話 筆者 in 福岡

10月15日 午前7時30分ごろ、佐波川サービスエリアに着きました。雨降ってます。

それでも9時間以上に及ぶ軟禁状態から解放されるわれわれ乗客にとっては

祝福すべき出来事以外の何物でもないのでとにかくSAへと降り立ちます。

お土産を買うタイミングでもないので『広島コーラ』なるものを飲みました。



ケミカルな風味……というか酸味(?)が印象的だったような気がします。

それから再びビデオの上映。『ロボジー』という邦画で

飛ばし飛ばしで観ていましたけど、まあそこそこ面白かったです。

上映の終わるころ、ついに福岡に到着しました!

筆者の第一印象は「大都会」。いやもう都心とそう変わらない見た目です。

車内の蒸し暑さにウンザリしていたのでネットカフェでシャワーを浴び、

身を清めてから太宰府へ参詣します。



天神駅へ着いたものの列車の姿が見えない……しばらく歩くと発見。

しかも時間ギリギリ。どうやら編成車両が少なかったので筆者のいるところまで

届かなかっただけらしいっていうか気づかなかったら待ちぼうけだった。

っべー。っべーわ。



第七話へ続く

 モテないし、ちょっと参詣するわ 第五話 はかた号 〜男の戦い〜

二股の延長コードを座席のコンセントにぶちこんでケータイを充電しつつ、

同じく電源のあるiPod(16GB=3600曲超という)で12時間をしのごうという本作戦。

音楽だけでなくポッドキャストや落語まで揃えたラインナップですので

退屈することはないだろうなーと思っていた。そんな時期が俺にもありました。

断言しましょう、無理ですそんなの。

なぜかって座席の圧迫感がハンパないんですよ。隣のオッサンは脂汗流してるし、

前の女は全力で倒してくるし、こっちもリクライニングしようとレバーで下げたら

後ろから低い声で「ちょっとイス戻してくれません?」などと宣う始末。

そんな中でまともに音楽なんてエンジョイできるわけがない!

しかもイヤフォンだからスピーカーと違って耳にかかる負担が大きいために

2時間もしていればうっとうしくなってきます。

かといって外せば周りは個人的な紛争地帯(©amazarashi)でこれまた不愉快。

だもんで睡眠なんて無理。ふっと睡魔に身をゆだねてみて再び目を開けると

かの有名な逆浦島現象に遭遇できます。

ちなみに筆者は午前1時〜2時ごろにおいてこの現象に3回ほど遭遇しました。

「ああ、寝た」と思って時計を見たら15分しか経ってなかったときのショックは

経験者じゃないと理解できないほど大きいのではないでしょうか。

そのときの心情を一言で表すと「戦慄」という言葉が最もしっくりきます。

午前3時ごろ、バスがサービスエリアで停車しました。

これは乗務員交代のためであって、乗客用のドアが開かれるわけではありません。

少しカーテンを開けると広い駐車場が見えます。

筆者は座席で圧迫感に攻撃されています。

外からはスタッフ同士の談笑が聞こえてきます。

筆者はオッサンのいびきを最前列で浴びています。

……乗客よりスタッフのほうが快適そうに感じるのですが気のせいでしょうか。

印象に残った出来事といえば、上の「スタッフの談笑」と「逆浦島現象」くらい。

この後、朝7時半ごろに佐波川SAで(乗客の!)休憩がありますが

それまでの乗車時間において思い出せるのは以上の2点のみ。

いかに無味乾燥たる時間を過ごしたかがお分かりいただけると思います。


第六話 福岡入り編へ続く

 モテないし、ちょっと参詣するわ 第四話 はかた号 序章

ここからが本番です……が、カラオケ部の活動が終わったのは18時。

深夜バス「はかた号」が新宿バスターミナルを出発するのは21時。

先に申しました、今回の旅における最大の弊害が登場します。それは「暇」です。

カラオケ終了後から出発までの空き時間があることを知ってはいたのですが

筆者は田舎者ゆえ眠らない街・新宿での過ごし方などトーンと見当がつかないわけで。

どこかで呑むか?と思いましたがこの時点での出費は避けたいところ。

西口へ回ってバスターミナルを確認した後、ジプシーよろしく歩き回るという手に出ました。

同じところを二、三周もすると居酒屋の客引きが明らかに「あれ、あの人……」

という視線を向けますがリュックサックを背負って煌びやかな新宿を徘徊する筆者。

最悪、カラオケもう一発(ソロ)行くかとも思いましたが、

なんとか19時まで引っ張りましてようやくバス待合室へ腰を下ろしました。

取り出したのは三島由紀夫仮面の告白です。

上京してきたのでしょう、連休最終日で疲れながらも充実した人々が談笑する中で

「自分がいかにして同性愛に目覚めたか」という誰得な暴露本を読む筆者。

しかもそこは待合室、居座ってせいぜい15分。筆者は二時間も粘りました。

粘りまくったおかげで『仮面の告白』は

「近江(三島の先輩)がタンクトップ姿で懸垂を行ったときに見えた腋毛がたまらねえ」

というあたりまで読み進めることができました。何なんだこれは。

ま、バスというか自動車の中で読むと筆者は確実に車酔いするタイプなので

今のうちに読まないと今後読む機会もなかったでしょうから

本が無駄にならずに済んだといった感じですかねえー。

さて、21時。いよいよ乗車です。座席は一階、エコノミークラスであります。

その名の通り最も安い座席で、すげえ狭いです。普通の路線バスと同じイスです。

天井にいたっては普通に背筋を伸ばそうものなら頭がこすれます。

「乗車する」というよりは「収容される」という形容がしっくりきます。

ちなみに本日の座席は全10席中、8席が埋まっておりました。

こんな感じです。(俺=筆者、男=男性客、女=女性客、空=空席)
 
 
男男 女空
男男 男俺
    女空
 
 
そりゃねーだろ。

何これ!?「女尊男卑」が叫ばれる昨今だけどこんな露骨な配置があるのかよ!

しかも筆者のお隣は40歳だとしても若すぎる、お腹の余剰ぶりも見事な塩梅のミドル。

勘弁してくれ……と思いましたが読者のみなさん、上の配置図をよくご覧ください。

そう、筆者の前と後ろが空席です!つまりリクライニング全開OKということです!

「地獄に仏」とはまさにこのこと。エコノミーは苦行に近いと伺っていたのですが

これはまあそこそこ過ごせる旅になるのかもしれない……と考えていました。

乗車して間もなく、乗務員さんがSOYJOYのケースを持って通過しました。

事前の調査で二階の乗客には軽食として配布されることを知っていた筆者は

「ああ、あれ上の客に配るやつだ……」とぼんやり考えました。

見せるだけ見せて通過、それがSOYJOYだとしても結構な所業ではないでしょうか。

つづいて長距離バス名物のビデオ放映。『新しい靴を買わなくちゃ』という映画でした。

主演は向井理中山美穂、舞台がフランス。監督は岩井俊二。音楽は坂本龍一

全力で興味を失ったため速攻でiPod起動です。音楽サイコー!

映画も終わった約二時間後、日本平PAに到着しました。

PAも最近はそのものが目的地として活用される施設。日本平PAも例外ではなく

公式サイトも賑やかですが現在23時のため、コンビニしか開いてません。

しかも、休憩も10分間しかなくこの次に乗客がバスを降りられるのは翌朝8時。

たとえ10分間でも貴重な外の空気なので存分に吸って車内に戻ると、あら不思議。
 
 
男男 空女
男男 男俺
    空女
 
 
おわかりいただけただろうか。

そう、前後の女性客が隣が空席であるのをいいことに窓側に移ったのです。

先ほど「リクライニング下げまくりで地獄に仏」などと書きましたが、

やはり地獄にいるのは鬼だけです。

昼間のオフ会で星野源の『地獄でなぜ悪い』を歌った自分を殴ってやりたくなりました。

ここで「後ろの人に一言訊けばいいのに」と思った方もいらっしゃるでしょうが

筆者は非モテ歴29年のコミュ障です。女性に声なんてかけられるわけねえだろうが!

したがってリクライニングなんて夢のまた夢と相成りました。

残り12時間、ここからが『はかた号』の本領発揮です。



第五話へ続く

 モテないし、ちょっと参詣するわ 第三話 カラオケオフ 後編 

新宿パセラリゾートに到着!つーか周りもカラオケ屋ばっかりだな!

筆者は初パセラのため期待しまくり/ハニトー絶対食ったるわ、と意気込んでました。

しかしそこはオノボリ野郎、内装に圧倒されまくり。

何あのシャンデリアみたいの!リモコンもなんかシダックスのと違う!

やべえ俺すんげえ負けてるわーと落ち込んでいたところへ現れるリズム楽器の数々。

独りカラオケのように「ただ歌うだけ」では済まされないといった

妖気が楽器各位からふきこぼれていました。

しかも筆者は楽器を受け取り損ねます。どうですか、この置いてかれっぷり。

駄菓子菓子、いったん歌い始めれば自分の世界!マイフィールド!俺の唄を聴けえ!

 

筆者の一曲目:地獄でなぜ悪い星野源

 

ええ、そりゃもうキレイに冷えましたとも。

歌ってるときから「えっ、誰……?」みたいな空気がガンガン刺さってきました。

しかも知らなくてもノれるような曲でもなく……まだマイナーな歌手なんですね。

どうやらアニソンならウケがよさそうな印象だったので再チャレンジ。

 

筆者の二曲目:BERSERK -Forces- / 平沢進

 

なんか、すいませんでした。

唯一まともに歌えそうなアニソンだったのですが、裏声で失敗し凹みまくり。

どうにでもなれ!と思って歌った『顔2005/ミドリカワ書房が意外に評価されたので

非モテ』を前面に押し出した選曲でちょこちょこと進みました。

人間、生のままがイチバンということでしょうか。

ハニトーも食えて好きな曲も歌えて満足しつつ受付のリンゴ酢に驚きつつ、

フリードリンクでグァバジュースを飲めるというメリットをかみしめながら

新宿駅あたりで解散いたしました。さて、ここからが筆者の本番です。

 


第四話 はかた号 序章へ続く

 モテないし、ちょっと参詣するわ 第二話 カラオケオフ 前編

10月14日、朝。

「オフ会」に対する恐怖のために未明まで眠れなかったせいで

頭がぼんやりしたまま荷物を用意しました。

下着一式とバスの切符、iPod、二股の電源コード(ケータイとiPod充電用)、財布、

三島由紀夫仮面の告白』の文庫本と折りたたみ傘を携えて新宿へ向かいます。

ご存じのとおり、台風26号がそろそろ九州に上陸しようかというころだったので

とりあえず傘だけは持っていこう、などと思っていたのです。

服装は長袖Tシャツに綿の襟付きを来たのですが、窓を開けた瞬間の秋風に

「こりゃいかん」と襟付きを捨てて厚手のチョッキ(?)的なブツを羽織りました。

今回の筆者は何度か失敗をしますが最大の失敗の一つはこの「服選び」でした。

襟付きとはもう10年の付き合いになりますけれども、

旅から除外された彼の念の為せる業でしょうか……。

ともあれ、ロンTに厚手チョッキで新宿へGO!

 

……で、みごとに駅で迷うわけです。

だって京王線ユーザにとって東口なんてまず使わないもんね!

一旦改札を出て西口→東南口→東口と迂回したからね!

10分前に来るつもりだったのに全力で迷子だったからね!

よく考えたらどんな恰好の人たちと待ち合わせているかを把握してなかったからね!

なんとか他のユーザ様に発見していただいて事なきを得ました。

あのときの筆者はマジな話、ちょっと涙目になっていたのはココだけの話。

そして、意外と話しかけてくるユーザ各位。

内弁慶とコミュ障をこじらせた筆者はとにかく追従しました。怖い!現実って怖い!

これで、もしカラオケがなかったら会話はぶつぶつ途切れて気まずくなって

こっそりケータイのアラームを5分後に鳴るよう仕掛けて鳴ったあたりで

着信のフリして「じゃあ別件がありますので……」と逃げ帰っていただろうことは

想像に難くありません。いやホント、いい人たちでよかった。

ちなみに歩き回って汗だくになったのでロンTはもう脱いでます。

 

第三話 カラオケオフ後編へ続く

 モテないし、ちょっと参詣するわ 第一話 序章

時に、2013年10月12日。

世間様は三連休の初日ということで街全体が浮ついておりました。

しかしヒンミーンな筆者は当然のように出社し当然のように上着を脱ぎ、

当然のように紅茶をすすり当然のようにデスクに向かっていました。

そして何となく思ったのです。「そういや福岡って行ったことねえな」と。

しかも博多でおでんやラーメンを食いまくるでもなく小倉で豪遊するでもなく

太宰府天満宮に参詣しよう、と思い立ったのです。

なんというか衝動的に旅を決定しました。魔が差したとしかいいようがありません。

(有休が二週間分ほどあったので)上司に確認をとって仕事をちゃっちゃと済ませます。

「お先に失礼します」と言うが早いか軽快かつ足早に職場を後にしました。

帰宅してからも筆者の勢いはとどまることを知らず、着替えながらPCを起動させ

初めてで不慣れながらも、あのはかた号の予約を取り付けました。

奇しくも、ちょうどその日ははてなハイクのカラオケ部オフが新宿で行われる日。

解散後にそのままバスに乗車するという姿に新宿中が筆者に惚れこむことうけあい、

という場面を想像しながら風呂に入ってビールを呑みます。

人生初の福岡、人生初の深夜バス。しかも台風接近中。カッコいい!

「30歳になる前にやっとこう」みたいなくだらん気概もあったのでしょう。

とにかく楽しみで仕方が無かったのです、自分の無計画ぶりにも気づかずに。

そんなこんなで13日の日曜日はぐだぐだしておりました。

 


第二話へ続く

 モテないし、ちょっと参詣するわ 第一話

それは2013年10月12日のこと。

わたしの頭に「そうだ、福岡行こう。」というフレーズが出てきました。

突然も突然、まったくの突然でした。だいたい、この時季に何をしに行くのでしょう。

それは博多でおでんとラーメンを食いまくるとか福岡在住の知人に会うとかもなく

太宰府に参詣するというだけの意思に至ったのです。

その日は世間様の連休初日。社畜の身分に鬱積したフラストレーションの邂逅、

とでも書けば恰好もつくのでしょうが「魔が差した」としか言いようのない感覚でした。

休暇をとって、帰宅後に深夜バス『はかた号』の予約を行いました。

14日夜に新宿を出発し、15日の昼に天神バスターミナルに到着。

同日夜に同じく天神BTを出て16日朝に新宿へ帰ってくるというスケジュールを計画。

「どーせお参りするだけだし、これで時間ギリでしょ」

などと嘯いていました。この浅はかさがこの旅において何度もわたしを苦しめた、

「とある要素」をすでに抱いていたことに気づくのは、もう少し後の話。

くしくも出発する14日は新宿において、はてなハイクにおけるカラオケ部の

オフ会に参加する予定もありました。自分の強行軍ぶりに陶酔しつつ

ウヰスキイに泥酔しつつ、週末は過ぎていったのです。

(つづく)