「2005年を省みて」の巻

 50年代に登場したテレヴィジョン、及びそれを利用するメディアの最大の特徴はその情報量にあった。昨今は「インターネットは情報の山」と叫ばれて久しいがわたしは今でもテレビは情報媒体として最も大きな力を持っていると考える。所以の一つはその強制性である。電源を入れたら音声と映像とが自動的に配信され、視聴者に出来ることといえばチャンネルを変えることくらいで肝心な「情報の取捨選択」の幅は限られている。極言すれば「情報をテレビから得る」のではなく「テレビから情報を得る」という逆転現象が起きているというわけだ。生まれたときに既にテレビが存在した世代が過半数を占める今日ではこの現象は決して稀なことではない。小学生における学校での話題は前日のテレビ番組が主であり、卑近な例だが、母は本日もテレビで放映されていた何らかのアクションを我が家の日常に持ち込んでいる。こうしてテレビは家庭を為す一要因としてほぼ完璧に収まった。それは畢竟情報機関であった。情報の価値はその新鮮さにあり、つまるところ情報とは消耗品なのだ。ということは大量の情報を扱うということは消費を加速することとほぼ同義である。かくしてそのブースターとしてテレビがその役割を担った。言い換えればテレビメディアに取り上げられるということはその寿命が縮むということなのである。早急に栄華を極め、早急に没落するのだ。以上を踏まえて。
 今年テレビで取り上げられたものに2ちゃんねるがある。この存在こそインターネットがメインストリーム足り得ない(=テレビに対抗しうる情報機関である)ことの証左だと考えていたが、あっさりとテレビメディアはこれを引っ張り出した。先にも述べたようにテレビはその絶大な影響力をもって、ある存在の価値やクリエイティヴィティを食い尽くす存在であり、その対象がいかに大きくあろうとも必ず行為を被る。2ちゃんねるもその例外ではなくだんだんとその潮が引いているように考える。このままテレビメディアにおいてのみならず本格的に減衰していけばそれはインターネットが持つ影響力の矮小さ(2ちゃんねる自体も非常に小さな存在だが)を示す好例となろう。今年も人々はテレビに振り回されてたということである。

 今回は以上です。