第3回 聴覚に接近

 どうも、荒井です。前回は論述形式だったんですが今回から講義録スタイルにしてみようかと思います。ぼくキッズだから詳しくないけどさ、エロゲーのコラムってこうゆう感じじゃん。それをやってみた、みたいな。いや別にヤンデレはエロゲに限らず文学、戯曲、実際の事件などさまざまに具体例を求めることが出来るんですけどね。だからこそ筆者も研究に値するんじゃないかと思って、まあ専攻は日本文学なんで文学からのアプローチ中心に一本の論文にしようかと企んでるという……もっと深い話をすると、ヤンデレは日本人が千年以上に亘って抱き続けている、ある誤謬と非常に密接に関わっていると踏んでいます。そうですねえ、身近な例で言うとじゅう……ゲフンゲフン、それでは今回の主題に参りましょう。
 今回は『「ヤンデレ」大全』P.98〜99を対象にお話したいと思います。属すると思われる邦楽についての具体例と軽い作品紹介が載っています。まずは80年代の病み系歌姫、戸川純。かの御大・細野晴臣プロデュースのバンド、ゲルニカでヴォーカリストとして世に出て、後にヤプーズを結成。ポップな楽曲と若干頭のネジが緩んでる歌詞で好評を博しました。しかも普通にテレビショーとか出てて。80年代の邦楽シーンがいかにバグっていたかといういいサンプルですね(苦笑)続いては筋肉少女帯。筆者はカラオケで「日本印度化計画」とか歌うんですが、確かに病的な曲も多いです。♪ど〜ろろ〜の〜のーうず〜い〜、て熱唱してるのは傍目には危ないという事実にたった今、気づきました(^^; GO!GO!7188倉橋ヨエコもそこそこ納得できるラインナップ。
 ……でもですよ、この中でメジャーな存在ってせいぜいGO!GO!くらいではないでしょうか。筋少の再結成だって読者の半分もご存じないかもです。歌詞も病んではいるけど「デレ」分が少ない気もします(ここ、『ヤンデレ』を考えるに結構重要なポイントかもしれません)。ましてや戸川純なんて消えてから随分経つような。というわけで筆者がメジャーなヤンデレJ-POPを挙げてみましょう。しかもアーティスト比率は女性3:男性1なので男性を二組ピックアップすれば平等。そう、ヤンデレは女性のもののみに非ず!
 一発目は銀杏BOYZ。まずタイトルからしてわかりやすい「あの娘に1ミリでもちょっかいかけたら殺す」。惚れた女の子が義父に連れられて転校してしまうのに何も出来ない自分が情けなくて、でもやっぱり無力で、これだけは言っておくぞという感じ。サビも「君のパパを殺したい」というあまりに直球なものです。続いて「十七歳」を引用してみましょう。「あいつらが簡単に口にする100回の『愛してる』よりも 大学ノート50ページにわたってあの娘の名前を書いてた方が 僕にとっては価値があるのさ」……いかがでしょうか。面と向かって話せないので大学ノートに名前をひたすら書きこむという発想。病んでます。最も直球なのは「SKOOL KILL」。歌詞冒頭では好きな女の子をストーキング→住所GET、さらにその娘のジャージを盗むという病みっぷり。てか犯罪者です。Bメロの歌詞が

 僕はストーカーなんかじゃないよ
 その辺の奴等と一緒にしないでくれよ
 僕は君が本気で好きなだけ
 ソフトクリームを一緒に食べたいだけ

これ以上ストレートなヤンデレ系歌詞もそうそうないのではないでしょうか?
 続いては、ちょっと疑問を持たれるかもしれませんが椿屋四重奏「群青」です。これはぜひとも全文を読んでいただきたいのですが転載は避けたいのでリンクを張っておきます。
http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=B09389

お読みいただけましたでしょうか。

さて、ヤンデレ萌えな皆様にはある人物が脳裏を過ぎったはずです。

いいですね?

わかってますね?

それではみんなで彼女を呼んでみましょうか。せーの、





 言葉様ぁーっ!




 っていうか、これを発見したときは何事かと思いました。もう桂言葉のイメージソングとして作られた、とか言われたら首肯しすぎてムチ打ちになっていたことでしょう。実際『School Days』から二年前にリリースされた作品なので関連なんてあるわけがないのですが……偶然の一致にしては出来すぎです。まんま「言の葉」という単語も入っています。「歌詞がヤンデレ」という先述の銀杏BOYZ戸川純とはちょっと存在を異にしますが、このあり得ない確率の共通点をもって挙げさせていただきました。
 さて、取り上げた二組はいずれもメジャーなアーティスト(某崎あゆみとか某レンジレンジほどではないにしろ)であります。このレベルのところから持ってこないと「例示」にはならないのではないか、という主張も込めて選出しました。筆者は論を書きあげる以上、ヤンデレをオーヴァーグラウンドな存在にする必要がある(要は普遍性ってことです)ので上記のアーティストを挙げましたが、もちろん同人などのアングラ音源には確実にヤンデレが生きている作品もあるでしょう。「『ヤンデレ』大全」付属DVDの「恋の原発事故」なんかはか〜なりいい感じです。ただ、もう少し歌唱力が欲しいですね、音楽フリークでもある人間なので(笑)
 本日はここまでとします。