モテないし、ちょっと参詣するわ 第五話 はかた号 〜男の戦い〜

二股の延長コードを座席のコンセントにぶちこんでケータイを充電しつつ、

同じく電源のあるiPod(16GB=3600曲超という)で12時間をしのごうという本作戦。

音楽だけでなくポッドキャストや落語まで揃えたラインナップですので

退屈することはないだろうなーと思っていた。そんな時期が俺にもありました。

断言しましょう、無理ですそんなの。

なぜかって座席の圧迫感がハンパないんですよ。隣のオッサンは脂汗流してるし、

前の女は全力で倒してくるし、こっちもリクライニングしようとレバーで下げたら

後ろから低い声で「ちょっとイス戻してくれません?」などと宣う始末。

そんな中でまともに音楽なんてエンジョイできるわけがない!

しかもイヤフォンだからスピーカーと違って耳にかかる負担が大きいために

2時間もしていればうっとうしくなってきます。

かといって外せば周りは個人的な紛争地帯(©amazarashi)でこれまた不愉快。

だもんで睡眠なんて無理。ふっと睡魔に身をゆだねてみて再び目を開けると

かの有名な逆浦島現象に遭遇できます。

ちなみに筆者は午前1時〜2時ごろにおいてこの現象に3回ほど遭遇しました。

「ああ、寝た」と思って時計を見たら15分しか経ってなかったときのショックは

経験者じゃないと理解できないほど大きいのではないでしょうか。

そのときの心情を一言で表すと「戦慄」という言葉が最もしっくりきます。

午前3時ごろ、バスがサービスエリアで停車しました。

これは乗務員交代のためであって、乗客用のドアが開かれるわけではありません。

少しカーテンを開けると広い駐車場が見えます。

筆者は座席で圧迫感に攻撃されています。

外からはスタッフ同士の談笑が聞こえてきます。

筆者はオッサンのいびきを最前列で浴びています。

……乗客よりスタッフのほうが快適そうに感じるのですが気のせいでしょうか。

印象に残った出来事といえば、上の「スタッフの談笑」と「逆浦島現象」くらい。

この後、朝7時半ごろに佐波川SAで(乗客の!)休憩がありますが

それまでの乗車時間において思い出せるのは以上の2点のみ。

いかに無味乾燥たる時間を過ごしたかがお分かりいただけると思います。


第六話 福岡入り編へ続く