「秋はつとめて」の巻

 フジテレビで早朝5時にやっていた衆議院比例代表議員選出選挙の政見放送を観る。放送したのは自民党新党日本民主党の三つ。それぞれについてコメントをば。
 まず自民党小泉純一郎氏がソロでご登場された。薄い黄緑色の襟付き長袖シャツにノータイ、いわゆるクールビズ。訴えていたのは郵政三事業民営化についてだが、殊に公務員による事業独占の問題を口にされていた。問題なのは「国民の判断に是非を問いたい」という文句である。一度国会で否決されたということは「国民の総意」によって否定されたも同然なのだ。つまり国民はとりあえず表面上は「非」としたわけで、氏の言い方はやや違和感を覚える。もうひとつ、反対勢力のほとんどが郵政事業に携わる公務員やその家族であると仰ったが、彼らとてきちんと税金を納める国民であることに相違ない。確かに三事業は民間によってもカヴァーできる職種かもしれないが、彼らにも家族があり生活がある。また、公務員になるだけの努力と犠牲も当然あったろう。それを特権階級的に扱い、しかも反対勢力の核とするのはいかがなものか。むしろ反対勢力の中心は野党勢にあると思うのだが。
 続いて新党日本。田中代表ともうひとりの党員のコンビ。共にスーツ姿で、バッジをつけている。「四季折々の……」という文句で放送が始まったので突然何を言い出すかなこの人は、と思ったのだが要は日本が負債国であるということを踏み台に無駄を省くことを発言した。ただ1時間に39億円の借金と言われてもなかなか実感できないので引き合いとしてはよろしくない。しかしながら、長野県における多額の負債(確か500億円超だったと思うが定かではない)を解消したという実績はその思考方向及び手段に説得力を持たせている。最後の方で語気を荒げた演出は逆に苦笑の元でしかなかった。
 三つ目の民主党岡田代表蓮舫氏とまたもやコンビ。序盤で「岡田代表は三人のお子さんがいらっしゃって……」と切り出したので小学生の生徒会役員選挙を思い出した。あのひたすら人格者であることに迫るタイプだ。小学生であったらその程度しか興味を惹くネタがないのは仕方ないが、実際の政党がそれでは困るなあ、と思っていたら実は蓮舫氏が岡田氏に話題を振って話させて、だんだん核心へ近づいていくという形式だった。落語、もしくは漫才のような手法である。ラスト4分で「政権交代」と何回も口にしていたのが興醒めだった。言い換えれば、最後の最後で小学生の演説に戻ってしまったわけである。

 まあまあ面白かった。皆さんも機会があればぜひ。