漫才「最大公約数」

荒井>
共通の話題で盛り上がるというのは交流を深める第一歩なわけだけど、その対象が「時代性」のみに連関するっていうのは取りも直さず他の「時代」への排斥が少なからず窺えるわけでいわゆる「年齢層間の断絶」という現代における病がここでも垣間見えると僕は思うんだよね


新井>
……


荒井>
というわけで「懐かしの話題」で漫才をやろうか


新井>
出来るかよ!笑いに持っていきづらい空気を作っておいてよくそんな台詞が言えたもんだな!


荒井>
じゃあ「夏歌詞の話題」でもいいけど?


新井>
なんだよ「夏歌詞の話題」って!


荒井>
「ストップ」「ザ・シーズン」「イン」「ザ・サン」の四語が入ってるポップスの歌詞ってどんなのがあったのかなー、みたいな?


新井>
どう頭をひねってもTUBEしか思い浮かばないよ!


荒井>
とまあ、今のもやや30代向けのネタではあったわけだけどもね


新井>
確かに10代はTUBEなんて知らないかもな。五年くらい年齢差があるともう話題に差が出来たりとかするし


荒井>
最近は音楽とかテレビとかのサイクルが早いからね。まあそれだけに昔のテレビ番組の話題で盛り上がるってのもあるんだけど


新井>
年齢差と言えば「クイズ!年の差なんて」ってあったよね


荒井>
あったねえ。山田邦子桂三枝師匠が司会で


新井>
「それぞれの年齢層における常識」で競い合うクイズ番組でな。年齢層で二チームに分かれるんだよ。「若者代表」のヤングチームはだいたい20代で……


荒井>
解答者が全員「ヤング・フレッシュ」のメンバーだったという


新井>
嘘をつくなよ!あと説明が必要なボケはやめろ!


荒井>
もう一方のアダルトチームは全員ボトムレスでね


新井>
そういう意味の「アダルト」じゃないよ!


荒井>
クイズ番組の解答者席ってだいたい机があるからそれを上手に生かしてたよね


新井>
だからそれも嘘じゃねえかよ!


荒井>
……こんな感じで時代の移り変わりというのは確かにあるわけだけど、変わらないものっていうのもあるよね。普遍性ってやつだけど


新井>
おお、いいこと言うじゃないの。たとえば?


荒井>
「地球は丸い」とか


新井>
そういう規模の話かよ!もっと身近なところじゃないのかよ!


荒井>
じゃあ「真夜中は何食っても旨い」とか?


新井>
今度は卑近すぎるよ!なんでお前はそうやって100か0の目盛りしかないんだよ!


荒井>
失礼な。97くらいにもあるよ。


新井>
たいして変わらないだろ!……いいから「普遍性」に話を戻せよ


荒井>
んー、昔の、それこそ昭和前期の落語を公開録音したテープとかあるじゃない。でも今聴いても面白いものは面白いわけさ


新井>
古典だから洗練されてるんだろうけどアレンジしたり、あと演じる際のアクションや発声で全然違うだろうから、それは芸人さん自身の腕だよな


荒井>
そういうこと。たとえ使い回された作品でも当座で「自分」を表現できればオリジナリティは出るわけで。むやみに新しいことをやるよりはそっちのほうが堅実だし「芸」という感じがするんだよ


新井>
変にいろいろと手を出して器用貧乏になってもアレだしな。やっぱ基本か。バック・トゥ・ザ・ベーシックというか


荒井>
そうそう。拙い笑いで「シュール」とか言ってるようじゃあ話にならないし。だから……


新井>
「だから」?


荒井>
ベタでいいんだよ、漫才なんて


新井>
ちょっと待て!それは論理のすり替えだろ!


荒井>
違うよ。全然違うよ。ベタでも笑えればいいの


新井>
なんでそういう話になるんだよ!


荒井>
てか笑いさえとれれば技量とか自分らしさなんてどうでもいいし


新井>
さっきと言ってることが180度転回してるよ!


荒井>
何言ってんだか。「勝てば宦官」だよ


新井>
「官軍」だろ!切ってどうする!


荒井>
いやあ流石にわれわれもここで「タマ切れ」ということで……


新井>
無理やりうまくまとめようするな!いいかげんにしろ!