酒とか
いま大風が家を揺らしている。
わたしはラフロイグ15年をロックで呑むのをやめてハイボールにした。
その目的は「よいウヰスキイはやはりロックで嗜むべき」という持論を
自身の舌でもって証明するためである。
しかるにこの証明も何らの客観性を持たぬために徒労であることは
被験者としても重々承知しているところだが
それは酒道楽とハードリカーとの調律によるものゆえご勘弁願いたい。
さて、このハイボールは結局持論をひっくり返した。
うまいウヰスキイはハイボールでもやはりうまかったのだ。
あるいはわたしの炭酸好きが為せたのかもしれぬが
いずれにせよ実験は失敗、改めて琥珀の酒毒に敬意を表する羽目になった。
外は大風ががなっている。
フィールド・レコーディング作品はいくつか持っているが中でも
風をあつめて録音した作品にはこころを揺さぶられる。
すべての音がここにあるような気がする。
自然の騒音はありとあらゆる音楽を超越する。
人や楽器には作り得ない地球の独唱がここにある。
しかし、わたしには生み出せないその音を聴くにあたっても
家の中という人工的フィルタを通してである点が悔やまれる次第だ。
やはり加工したものを味わうのが心地よいという認識は贅沢の為せる業だろうか。