あの二人で漫才書いてみた Episode 6
はいどーもー！
よろしくお願いしまーす！
＞早いものでもう今年も残り三分の一というね
＞夏が終わっちゃうと一気にそんな雰囲気になるよねえ
＞漫才もも四か月にいっぺんくらいだから余計に時の流れを感じるわ
＞そこは放っておいてくれよ！
＞このタームだと次回は年末かね。ネタ的にはクリスマスとか紅白とか……
＞なんか想像に難くねえな！もっと明るくやろうぜ！
＞じゃあ夏の思い出とか語ろうか。バイトとかお祭りとかナンパとか恋とか
＞おお、そういうのいいね
＞ま、楽しい夏の思い出なんてありゃしませんけどね……
＞無いのかよ！
＞ホント海だの恋だの、夢見てんじゃねえよボケって感じっスよ
＞お前がふったんだろうが！
＞バイトはあるけど工場の搬入作業でパートのおばちゃんが缶コーヒーおごってくれたりとか
＞切ねえなオイ！ もっと夏の魔法で盛り上がったりしないのか？
＞当たるまでガリガリ君を食べたことはあるけど
＞無駄に夏を満喫してんじゃねえよ！確かに夏くらいしかできないけど！
＞まあ見事にあたったんですけどね、トイレから出られなくて
＞食あたりのほうかよ！またベタな展開だな！
＞じゃあ逆に訊くけどもさ
＞なんだよ
＞キミはどうなの？ 夏の魔法とやらを駆使して異性をゲットしたことあるの？
＞つーかそれが普通だろ、夏なんて
＞えっ！？
＞いや相手だってそれはわかっててさ、後腐れなしの付き合いとかそりゃあるでしょ
＞はー……
＞別にこっちも追いかけようとしないしね。ひと夏の出来事だからそれはそれ、っていう
＞師匠って呼んでいいスか
＞いきなり何だよ！
＞いやいやそんなリア充SUMMERを送っていたとは知らず、とんだご無礼を……
＞夏の過ごし方ひとつでどんだけ卑屈になってるんだよ！
＞ボクもね、そういう夏を一回でいいから経験してみたいんでちょっといろいろ聞かせてよ
＞別にいいけど今年の冬のイベントを見越したほうがいいんじゃないか？
＞何言ってるの。計画は長期的スパンで見るものだよ
＞そんなもんかねえ……
＞じゃあさ、最初に会話をするときはどうすればいいの？
＞そりゃ一も二もなく褒めるしかないでしょう。「そのピアス素敵ですねー」とか
＞ほぉー
＞小物って実は服全体よりも結構こだわるじゃない？
＞なるほど。「そのヅラ似合ってますね」とか
＞絶対ダメだよ！
＞でもこだわってると思うよ？ 盛りすぎないようにとか生え際の自然さとか
＞ヅラのこだわりと小物のこだわりとは次元が違うだろ！……あと細かい視点も嬉しいかな
＞たとえば？
＞ブランドを指摘して情報の共有をアピールして親近感を与えるっていう感じで
＞「そのヅラ、アートネイチャーですよね」っていうのはどうかな
＞だからヅラから離れろよ！
＞ちょっと視点を変えて「そのシャドーロール珍しいですね」っていうのは？
＞明らかに話しかけてる相手が馬じゃねえかよ！
＞なんかファッションは苦手っぽいな
＞だったら食事とか。もちろん相手の好みをリサーチしてからだけど
＞あ、それは大丈夫。ゴミ袋を漁ればレシートからだいたいの好みはわかるし
＞それはリサーチじゃなくてストーキングだよ！……こっそり友達から聞くとかあるだろ
＞こっそり名前も知らない友達に盗聴器を仕掛けてもらって聞くって手段もあるよね
＞だからストーキングじゃねえかよ！なんでお前はとりあえず法を無視しようとするんだ！
＞恋に落ちた二人に法なんてナンセンスだよ
＞まだ相手は落ちてないだろ！なんで勝手に「二人」にしてるんだよ！
＞……で、食事っていろいろ選択肢がありすぎて迷うんだよね
＞大雑把にいうと呑めるか呑めないか。あと和洋中でザックリ決めてみるかな
＞エスニック料理とかは？
＞ああ、そういうのもいいね。ちょっとマニアックな場所で新鮮な感じで
＞生け贄とか必要だけど大丈夫？
＞大丈夫なわけあるか！っていうかどんなレストランだよそれ……
＞レストランじゃなくて集落なんだけど
＞何族の集落だよ！普通に食事させてくれ！
＞普通に食事？
＞普通に食事
＞じゃあガストとか
＞普通すぎるだろ！ちょっと昼飯食うのとはわけが違うんだから！
＞デニーズもダメ？
＞ダメだよ！
＞だったら奮発してロイヤルホストだ！
＞全部ファミレスじゃねえかよ！ムードもへったくれもないな！
＞でも夏といえばロイホのカレーフェアとグラスビールで一杯やって帰るのが醍醐味なんだよ
＞残業上がりのサラリーマンと同じ発想で考えるなよ！
＞よーし、これだけ知識をそろえれば来年の夏は完璧だな
＞全体を振り返っても完璧な要素は微塵もないけどな
＞……あ
＞どうした？
＞来年の夏よりも今年のクリスマスシーズンのことを考えたほうがいいんじゃない？
＞だからさっき言ったじゃねえかよ！
＞というわけで最初から教えてよ。ヅラの褒め方とか
＞何一つ身についてないじゃないか！いいかげんにしろ！
