「マザー2」の巻

 高校時代より狂ったようにレコードを買い集めるようになってからというもの、とんとビデオゲームに興味がなくなった。我が家にnintendoDSはおろかPS2すら無いのもそのせいである。
とはいえそもそもレコード集めに走ったのもbeatmaniaというビデオゲームが原因であるし、なんだかんだで昔のハードを引っ張り出して遊んだりすることもあるのだけれど。

 そのひとつが「マザー2」だ。

 本来、RPGは長ったらしくて面倒なのでやらない性質の私が自ら手を出したゲームだ。プロデュースがヘンタイよいこ新聞編集長の糸井重里だったり音楽監督ムーンライダーズ鈴木慶一だったりと、後から私の食指が動いた理由がわかったのだが、プレイした当時の私は小学4年生。YMOなんて毛ほどにも存じ上げない小僧である。それでも何か感性に訴えかけるものだったのだ。

 まず、世界観。RPGといえばウィザードリィ(古いなまた)やDangeons&Dragons(TRPG最古参のひとつ)のような亜人族や魔法といったファンタジーものが主流であった。が、マザー2は、というか『マザー』シリーズは違った。我々の生きている世界とほとんど変わりがないのだ。市長とのいさかいやチンピラの屯するゲームセンターがあり、図書館で人に話しかければ「しずかにしてくれないか」と注意される。HPの回復はハンバーガーだ。魔法に類する存在はPSIと呼ばれ、つまりサイキック=超能力であり、我々から決して遠いとは言いきれない位置にある。ステータス異常も「日射病」「ホームシック」とごく普通。序盤の敵キャラクターは野良犬やカラスがメインだ。この身近な世界観がまず私を惹きつけた。
次に、当然話が進むにつれてファンタジー要素は強くなる。しかしそれとて不自然な方向へ突然進むわけではない。少しずつ、おかしくなっていくのだ。そのスピードやタイミングが非常によろしい。日常の延長線上から少しずつ丁寧に無理のないようにずらしていく。なので、ストーリーがすっと頭に入っていくのだ。これがまた涙無しには語れないものである。
続いて、これが最も素晴らしいのだが「無駄」なイヴェントの多いこと。クリアには全く関係のないイヴェントがこれでもか!というくらい用意されている。しかも単発ではなくきちんと起承転結あるイヴェントすらある。小学生が寄り道を非常に好むのを糸井氏は察知していたのだろう。

 ぜひ機会があれば触れていただきたいゲームではある。

 今回は以上です。