「我が家の老婆」の巻

 今回はややほのぼのする話。
 よくペットは飼い主に似るというが、私が幼少期に引き取った猫もそれに該当する。ヒトの年齢に換算すると80歳を超えているのだがまだまだ元気にのしのし歩いている。猫又は目前だ。バイトを始めてからというもの、餌や砂といった経済的援助の一切は私が担っているので私が「飼い主」と名乗っても差し支えあるまい。
 さて、そんな彼女のどこが私に似ているかというと「テクノが好き」ということである。動物のヒト文化への干渉を地で行く猫なのだ。家においてビートルズやサバスを聴いていても全く寄り付かないが、アンダーワールドを聴いているとひょっこり現れ、スピーカーの前に陣取ってすやすやと眠る。近くに雑誌が転がっていれば枕にさえする。クラシックは好まない。フォークも駄目だ。acid technoだろうがtranceだろうがテクノであれば好んでアリーナ席を確保するのである。お気に入りはKRAFTWERKであり、このへんも飼い主と一致する。昨日も「Tour de France orijinal sound tracks」を聴いていたら、無言でやってきて私の側へやってきた。擦り寄っているわけではない。このサインはつまり「邪魔だからそこをどきたまえ」という意味である。反論しても無駄なので仕方なく場所を譲ると、満足そうに身体を丸めて眠りにつくのだ。
 電子音楽が人のアルファ波に刺激を与えるというのは聴いたことがあるが(テクノがしばしば『快楽主義の音楽』と呼ばれるのはこのためである)、果たしてこれが猫に通じるのかは疑問である。疑問ではあるが、事実、我が家の猫はテクノを好み、今日もスピーカーの前で目を閉じているのだ。

 今回は以上です。