「カレーライス」の巻

 食卓からカレーの香りがしている。基本的に我が家ではルウにバーモントカレーを用いているが、辛いものを好む母は無印良品の4人用で200円のレッドカレーをよく食している。遠藤賢司もこのへんを喰えるのだろうか。とかくにカレーを好まない日本人というのはそういないと思う。再び我が家の台所に視点を戻すが、調味料入れの中にガラムマサラが入っている。ガラムマサラとはアジアンスパイスの七味唐辛子のような香辛料だ。これを少し振るだけでインスタント・ルウでも風味が違ってくる。どれぐらい違うのかというと、三日目まで残るべき量のカレーが二日目の昼には無くなっているくらい違う。
 さて、本日の焦点はこのガラムマサラである。これを売っているのを見たときには少なからず驚いた。先ほど七味唐辛子のようなものと書いたが、これも七味同様に数々のスパイスを調合したものなのだ。ゆえに、決まった材料というものがない。これを「市販している」というのはどういうことなのだろうか、という考えが過ぎったのだ。おそらく「香りの王様」と呼ばれるカルダモンほか、クローブナツメグあたりのスパイスが主だろうが、やはり疑問を感じる。
 昨今は広告の一人歩きが平生と化しているのに、その平生さのあまり中身が見えないこと、そして見えないことに無自覚なケースがあまりに多い。ここまであからさまなら広く気付かれるのも時間の問題だと思うが、それはやはり時間の問題なので現状が長期間続いている最中なのだろう。ところで、我が家の食卓に置かれている「ガラムマサラ」は鮮やかな赤色をしているのだが、実際のスパイスを混ぜたものはどんな色なのだろう。結局わたしとて「カレー粉」しか知らないのである。