「A boy colored Pinkdark」の巻

 映画「チャーリーとチョコレート工場」が観たいのだけれど、最寄の映画館では上映の予定はないという。仕方ないが立川まで足を伸ばさなければならない。本も買うのも映画を観るのも立川へ訪れる必要がある。CDなら何とか間に合うがレコードではやはり立川へ向かう。わたしの住む地域では猫も杓子も立川であり、丸井をつぶして出来たゲームセンターにほとほと呆れる限りなのだ。
 閑話休題。「チャーリーとチョコレート工場」だが、公式サイトやテレビでの宣伝を見る限りでは、ティム・バートンの趣味がことごとく噴出しているような感じがする。つまりは傑作である。彼の特徴といえばグロテスクやホラーに通じるものを巧みにユーモアへ変換させる唯一無二の作風である。言い換えれば、ブラックなものをギリギリのところでファンタジーへ転回させる奇才というか変態というか天才なのだ。「フランケンウィニー」などがその良例だろう。愛犬を交通事故で失ってしまった少年が、カエルの電気ショック実験に触発されて墓を掘り起こして蘇生させるという話だ。当然街の人々は気味悪がるのだが、ラストでは泣かせてくれる(映画の佳境を書いてしまうほどわたしは野暮ではない)。このあたりは「シザーハンズ」へ続いているように考える。この映画の見所は主人公の人造人間エドワードと彼の住んでいた城ももちろん該当するが、最もヴィジュアル的な面に特化すればあの町並みだろう。辺りには家しかなく、すべて平屋で単色なのだ。このファッショな美しさはスタンリー・キューブリックの残酷なまでの整然ささながらである。「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」は所謂ストップ・モーションアニメーションで、ミュージカルの要素も兼ね備えた映画界でも異色の作品だ。全体的に黒を基調としているものの陰鬱さというよりは一瞬のきらめきを目立たせるように敢えて暗くしているかのような印象を受ける。とはいえ蛇や虫やらを詰め込んだ麻袋で出来ている怪人ブギーマンはなかなかにグロテスクなキャラクターで、お子様に自信をもってお勧めはできないアニメ作品だ。主人公のスケルトン、ジャックが飼い犬を遊ばせるために平然と左腕の骨を折って放り投げるシーンも同様である。
 さて、「チャーリーとチョコレート工場」であるが、まさにティム・バートン節とでも表現できそうな映画のようだ。原色の世界は「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンド」を視覚化したような印象を受ける。これで主人公が貞操帯を身に着けていれば完璧なのだが、そこで踏みとどまるのが彼である。今日にでも観てこようか。