「25年目の三羽烏」の巻

 やっとBeastie Boysのベスト盤を購入した。DEEP PURPLEに絆されていた中学生の時分に「Fight for your right」を聴いて以来、企画盤「Grammy Nominees」でその名を見たときはちょっと嬉しかったり、テレビでDJ Mix Master Mikeのスクラッチプレイを目の当たりにして度肝を抜かれたり、スケボーキングの「Back to the basic」って「Sabotage」のパクリじゃないの?と疑ったりと、近づいたり遠ざかったりしていたバンドである。この「たり」っぷりが実に宜しい。
 つまり、いい意味で彼らは常に地に足が付いていない。軽薄だ。そしてその軽薄さゆえに所謂反則というものがない。「To the 5 Boroughs」の一発目「CH-CHECH IT OUT」が80年代のオールドスクール丸出しだし、「Intergalactic」のPVは酔狂としか思えない。要するにアホである。アホなことを平気でやってしまう連中なのだ。Lyricなんかを読んでみても明るいものが多い。JAY-Zと比較してみるとパルック昼白色といった感じに明るい。hiphopの持つ暗さとか沈んだ感じとかが感じられない。
 つまり彼らの音楽は「なんちゃってhiphop」なのだと思う。何か面白い音楽だから俺らもやってみようぜ!という感じで表面だけ真似してみました、という印象を受ける。これは「本格的」なhiphopを好む人間にとっては非常に癪に障る話である。源流であるBluesの血脈を微塵も受け継いでおらず、ただ「カッコいいから」という理由による猿真似でしかないのだから。しかし、Beastie Boysは自身の感性を信じて、実に20年以上猿真似をやり続けた。結果、誕生したのが本物の「なんちゃってhiphop」である。そのセンスは「本格的」なhiphopに遜色劣らぬ究極の上っ面による。「何かカッコいいから」という安直な動機によるアクションはどうやら本当にカッコいいものを作ってしまったらしい。ゆえに彼らの音楽はhiphop以外の何物でもない。彼らがそう定義しているのだから。Beastie Boysはこれからも飄々と軽薄さを歌い上げていくだろう。