「ロックンロール細見」の巻

 そもそもロックンロールとは「Rock and Roll」と綴り、縦揺れと横揺れという意味らしい。アメリカのラジオDJが造った言葉だそうだ。Led Zeppelinにそのままの曲名があるが、これを聴く限りでもロックンロールはいわゆる「ロック」とは一線を画す存在であると考えている。Bill Haley&His Comets「(We're gonna)Rock around the clock」をロックの起源として2005年をロック生誕50年の年とした人もいたそうだが、これも畢竟ロックンロールを指しているのだと思う(『Rocl around the clock』を聴けばなおさら)。要するにロックンロールとはダンスミュージックなのである。
 このあたりが80年代にイギリスにおいて結実した。マッドチェスター・ムーヴメントととも呼ばれたあの熱狂だ。パンクの火が消え、ニュー・ウェイヴからノー・ウェイヴへと移行し、中身の薄さはそのままに太いビートを刻んだ音楽が生まれたのである。それはより踊らせることを目的としていた存在に他ならず、つまりロックンロールがロックンロールたり得たことの証明でもある。彼らはYMOがギターを廃したのとは対照的にリズムボックスやシンセサイザーエレキギターとを共存させた。後にビッグビートやデジタルロックと呼ばれるものの雛形である。80年代後半からダンスミュージックの主流機材がシンセサイザーサンプラーになろうともギターを捨てなかった彼らにはやはりロックンロールの素養が植えつけられているのだと思う。
 Franz Ferdinandというバンドはこのロックンロールという流れをそのまま受け継いでいる。彼らのサイケデリックな音を初めて聴いたときはあまりに古すぎたのでなぜ売れるのか不思議に思ったのだが、周囲を見ればそれは理解できた。2004年現在、ダンスミュージックを奏でる連中にギター、ベース、ドラムスといった編成のものが皆無だったのだ。彼らがイギリスから生まれたのは当然といえば当然であったのだが、今やロックンロールと呼ばれるべき音楽をやるバンドが見られないがゆえにFranz Ferdinandは革新的に見えたのである。彼らに多様な音楽性などはない。すべてが踊らせるために作られている。ゆえにロックンロール・バンドなのだ。日本でもこのような音楽が聴かれなくなって久しいので是非とも復活を願う。