「今年の最後に買ったCDは今年の最高の作品だった」の巻

 タワーレコードでCDを何枚か買った。今年はクラシックとジャズが増えたように感じる。後者は完全な趣味だが、前者はゼミの課題とも大いに重なるためにそこそこ使い道があるのだ。で、今年最後に買ったクラシックのCDはジョージ・セルの来日ライヴを記録した「Live in Tokyo 1970」(二枚組)だったのだが、これがとんでもない代物だった。以前メンゲルベルグ指揮のバッハ「マタイ受難曲」を聴いたときには(ヘッドフォンで聴いたのもまずかったかもしれない)とにかくダウナーな雰囲気になって拳銃が傍にあったらきっと頭を打ち抜いていたかもしれないくらいの陰鬱とした気分に陥り、同時にこれは凄いぞと思ったのだが、セルの場合はポジティヴに感動した。クラシックというのは基本的にイージーリスニングとして聞くので「ひだまりスケッチ」の第2巻を読みながら一枚目のCDをかけたのだが、ウェーバー「オベロン」序曲の演奏が始まった瞬間に顔を上げてしまった。Galaxy 2 Galaxy「Hi-Tech Jazz」以来のアクションである。音が立っているというのが最も適切だろうか。モーツァルト交響曲第40番ト短調も文句のつけようがない(そもそも文句をいえる立場ではないのだが)。セルが凄まじいのかモーツァルトの強烈さゆえか、とにかく圧倒的である。先生が熱心に書いていたのも頷ける作品だ。クラシックのCDでお薦めを訊かれたらこれを推すだろう。
 ちなみに一緒にもう二枚買った。一枚は泉谷しげる泉谷しげる・メモリアル」で、中古のレコード屋で見かけるたびに「早くCDにならないものかな」と思っていた。「春夏秋冬」「戦争小唄」「春のからっ風」など、初期の代表曲が入っているのでかなりの名盤であるといっても間違いないだろう。もう一枚は「電電オバケカーニバル」というインディーズのオムニバス盤だ。YMCKトンガリキッズ(80年代じゃないほう)の風を受けての8bitテクノ狙いなのだが、普通にドリルンベースだったり「ユリイカ」の任天堂特集号で取り上げられていたcow'pも入っていたりとなかなかいい感じである。が、所詮はインディーの電子音楽というレヴェルで、セルのときのように顔を上げるということはなかった。サンプリングやCDJで擦るときには使えそうだが。
 なかなかにいい収穫だったといえよう。来年も楽しみである。