「Flim」の巻

 何ヶ月かぶりにレンタルビデオ屋へ行った。が、結局利用しなかった。最寄の店はたとえば「SAW3」のような話題作だったり映画でなくても「プリズン・ブレイク」のような有名TVシリーズだったりすると入荷してくれるのだが、ちょっと脇に逸れると揃えてくれない(しかし『X-ファイル』はファーストシーズンから全巻入っている)。今回は映画「日本以外全部沈没」と「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」、「メタル:ヘッドバンガーズジャーニー」を求めに行ったのだがどれも入荷されていなかった。原付で遠出してTSUTAYAまで行くべきか迷ったが踏み切りを渡るのが面倒なので諦めることにした。
 このビデオ屋が出来る前には、より小規模な店を利用していた。この店は個人経営ということもあってかコアな品揃えだったのを覚えている。当時はDVDなんてものは無かった。幼少期にひたすら「幽幻道士」シリーズ(とそれに類する香港映画 Ex.『チャイニーズゴーストストーリー』)とOVA(専らヤングジャンプ系だった)を観漁るという、ちっちゃな頃からサブカルチャー、十五でマニアと呼ばれたわたしの映像文化の三割はこのビデオ屋にあるといえよう。鮮烈に記憶に残っているのは、hiphopを語るうえでは避けて通れない映画「JUICE」である。観たのは中学生のころだったろうか。あの店が潰れる直前だったのは覚えている。思春期真っ只中に観たそれはストーリーというよりも場面のほうが思い浮かぶ。当時は2Pacなんて名前さえも知らなかった。
 昨今はどこもかしこも同系列のフランチャイズビデオ屋ばかりで正直うんざりしている。同系列ということは品揃えもほとんど同じで確かに全体の水準は上がるだろうが、現在では手に入らない作品に出会えるのもレンタルビデオの醍醐味のひとつだと考える人間もいるのだ。そのシステムの潤滑も要項かもしれないけれども、上の事柄もご理解いただきたい。