第1回 パイオニア

 酒がいい感じに回ってきたので『ダブルキャスト』の話でもしますか。 確か10年くらい前にリリースされたPS用のビデオゲームです。 豪華な声優陣(置鮎さんですよ!)にProduction I.G.による美麗アニメーション、今で言うところの「エロカワ」なヒロインなどいかにも「萌え」な外見をしておりますがゲームを起動させるとあら不思議。

「このゲームには暴力シーンやグロテスクな表現が含まれております」

 なんと『バイオハザード』と同じ扱いです。何も知らないでプレイして(=筆者)度肝を抜かれた人数知れず。冒頭の注意書きのとおり主人公くんは鉄パイプで殴り殺されるわ、人が自殺する瞬間を収めた映像を公表するのを手伝わされるわ、郵便受けに猫の死体を詰め込まれるわの大忙しです。グッドエンドも全部で4種類あるもののそのうちひとつはこれほとんどバッドエンドじゃねーか、ぐらいの哀れな展開。軽々しく美月たん萌え〜とかほざいてるともれなく刃物でメッタ刺し。いかほどー。テーマ的にも非常に重いものを扱っており今のソニーだったらゴーサイン出してなかったのではないかというくらいの作品です。んで、なんで今回『ダブルキャスト』を話題に出したのかというと、


 ヒロイン・赤坂美月はヤンデレなのか?


 という問題を検証するためです(長い前フリだったな)。



 !!注意:以下、『ダブルキャスト』についての知識が必要です!!


 主流たる『スクールデイズ』の桂言葉を例にとりますとヤンデレてのは誰かにベタ惚れ→でも全然振り向いてくれない→欲求不満・思い詰める→精神・行動が非常識化(相手を監禁・ライバル的存在の物理的排除)、というのが主なパターンなわけです。んでこれを赤坂美月に重ねると別に主人公に惚れてるわけでもなし欲求不満というわけでもない。つまり「ヤミ」ではあるけど「デレ」じゃないということです。ほいで考察を重ねた結果、「デレ」の対象を広くとることで解決しました。まずは本物の赤坂美月(以下『姉美月』)、彼女は完璧にヤンデレです。男性不信なうえ、妹の志穂を溺愛していて近づく男は片っ端から排除します。そのうえ男なんかと付き合う志穂を虐待する始末です。しかし妹が自分より男を選んだ事実を知って自殺。おお、見事なヤンデレ。んで姉の自殺を目撃したショックで志穂は姉美月の人格を背負うわけですがオカルトじゃあるまいし人格なんて乗り移るもんじゃないと思います。となると考えられるのは志穂の姉美月に対する歪な愛情でしょう。辛い過去が原因で男性不信になった姉とそれゆえの行動に対する同情と憎悪、結果的な姉への裏切りとそれが引き金となっての姉の自殺に対する自責などが「姉を自分の中だけでも生かし続ける」という意思に昇華されて志穂は多重人格障害を発症することになったのだと思います。単純にいえば姉美月を愛していたからこその精神障害だったと。おお、これも見事にヤンデレじゃないですか。っつーか主人公が絡んでこないスね……でもそんなの関係ねえ!
 こういう諸々があって赤坂美月はヤンデレヒロインの先駆けとして再び見直されつつあるのでした。めでたしめでたし。……しかしバイトの最中にこんなことばっか考えている筆者も相当病んでると思いませんか。