コラム

 「今年の最後に買ったCDは今年の最高の作品だった」の巻

タワーレコードでCDを何枚か買った。今年はクラシックとジャズが増えたように感じる。後者は完全な趣味だが、前者はゼミの課題とも大いに重なるためにそこそこ使い道があるのだ。で、今年最後に買ったクラシックのCDはジョージ・セルの来日ライヴを記録した…

 「remix」の巻

いよいよ本日「shinzou.jp シネステージア」にてチバユウスケ×大沢伸一によるユニット、Star Casinoの音源が配信される。Thee Michelle Gun Elephantを遅ればせながら追いかけようとしている現在においてなかなかに奇遇だ。9月の初めに部屋を整理していて見…

 「否定的意見」の巻

小学校教諭が云々、という例の事件について。テレビのコメンテーターというのはわれわれ視聴者のオカズになるのが仕事、というのは周知の事実であるが、それでも意見の的外れっぷりとその対象の大々的さ加減にはいささか思うところがある。最も気に入らなか…

 「Bassic of Music」の巻

Squarepusherの最新作「Hello Everything」を購入。何よりも驚いたのはそのタイトルである。わたしの彼の音楽との出会いは「Come on my selector」であり、所謂「鬼気迫る(というか半狂乱の)ドリルンベース」という印象だから、というのが第一の理由で、第…

 「回路への接続」の巻

NHK教育「N響アワー」を観る。ゲストは菊池成孔。だから観たのだけれど。現在のわたしはひたすらジャズを追いかけており、必然的に菊池氏を追いかける形になる。ジャズに関する技術はもちろんのこと、理屈として体系化(少なくとも東大で講師を務める程度に…

 「神髄」の巻

ブルックナーの交響曲第9番ニ短調を聴く。朝比奈隆指揮、演奏は東京交響楽団。1991年5月16日の渋谷・オーチャードホールにて収録。第2楽章における、オーケストラの容態が心配になるくらいの容赦ない肉体的凄絶さに度肝を抜かれる。特にひたすら鳴り続けるテ…

 「鼓動」の巻

横浜の地へおよそ10年くらいぶりに降り立つ。渋谷から一本で元町へ行けることに時代を感じる。当時は小学生だったために中華街で何か食った(しかも何を食ったかも覚えていない。その後のラー博ならなんとか)程度にしか記憶が無い。まずは坂を上って「港の…

 「リバイバル、あるいは忘却に対する経済的美徳」の巻

タワーレコードに立ち寄ったらDVDの視聴コーナーで奇妙な商品を発見した。「兼本さん宅」という鉛筆だけで描かれたコマ送り(みたいな質感の)作品である。別にグラフィックの技術がひどいものを売っている、ということには抵抗は無い。技術の(受動的な)乏…

 「Counter」の巻

ボクシングのテレビ中継を見ていたら「ダウンを取られると目が覚める」という言葉を聞いた。背水の陣というか、一度ぶん殴られて土がついたことによって人間は覚醒するということだろう。 '99年ごろから渋谷に通い始めた。当時はエピックトランスがブームで…

 「仕方ない」の巻

50歳を過ぎて肉体労働で生活の糧を得ている人というのは、言うまでもなく会社社会における下層の人間である。しかも正社員でなくアルバイトであるとなれば下層も下層、最下層である。そういう方々を相手に三年ほど工場に勤務しているわけだが、この継続は偏…

 「結論」の巻

要するに「24時間テレビ」はテレヴィジョンに映る他人の努力を鑑賞するだけの時間と体力(換言すれば『暇』)を持つ人を対象にする、つまり、他人を構うだけの余裕がある人に価値を置く企画であり、自身で精一杯の人、つまり「24時間テレビ」を見る暇がない…

 「猶予と絶壁」の巻

不思議なことに、文科系の大学生というのはサラリーマンになることに抵抗があるらしい。汗水垂らして労働するよりも自らの研究に没頭することに価値を置くがゆえだ。果たしてそうだろうか。生物のステータスとして普遍的に、食糧の確保に対する能力と特殊技…

 「若々しさ≠若さ」の巻

NHK総合「イッセー尾形のたった二人の人生ドラマ」を観る。三人の俳優とそれぞれ二人芝居を行うものだが、舞台は博多は中洲のとある屋台で固定し、人物の大まかな設定以外は一切のアドリブという極めて野心的な企画である。元YMOの三人にしてもそうだけれど…

 「価値ある理由」の巻

雑誌「ユリイカ」2006年6月号の特集「任天堂/Nintendo〜遊びの哲学」を読む。わたしの世代はがっちり「nintendo」世代である。思えば、コンシューマ機の変遷を身をもって体験したような印象だ。スーパーファミコンとゲームボーイで年齢一桁時代が終わり、小…

 「『解釈』に対する解釈」の巻

音楽は音楽として、聴覚のみで感じればそれで何も問題はない。ブルースロックにおける悲哀とか、「海ゆかば」のイメージの変遷とか、そういった背景にわざわざ触れる必要はない。知っていて損はないだろうけれども、おそらく音楽を生業としないかぎり(或い…

 「開門」の巻

Vindaloo(以下『ヴィンダルー』)という料理を知った。個人的にはかなり衝撃的だった。西インドはゴア地方に発するらしいカレーの一種で、とんでもなく辛いというのでわたしはまず食べられない。酢を用いている(本場ではココナッツビネガーらしい)ことか…

 「隙間産業」の巻

NHK教育「私のこだわり人物論」を観る。パーソナリティは美輪明宏、対象は寺山修司。70年代の混沌をそのまま体現してしまったかのような存在として寺山を描いていたように感じた。確かに彼はカオスである。まず肩書きが不明瞭だ。小説家であり、戯曲家、詩人…

 「一端」の巻

七尾旅人のディスクを繰り返し聴いている。ヴォーカルをとる人間の声色は何物にも似ていないということを遅ればせながら再確認した。シンセサイザーの技術は進化し続けるだろうが、人間の声だけは楽器屋に並ぶことはないだろう。Johnny Rottenや横山剣がなぜ…

 「世界的批評」の巻

ウェブログスペースはいよいよもって世間に浸透してきたようだ。こうなれば60億人総批評家時代も決して遠い話ではないとつくづく思う。ことに日本では、こうした時代が四半世紀ほど前にもあったのでその増殖と見て構わないだろう。言うまでもなくその前例と…

 「六弦」の巻

NHK総合「音楽・夢くらぶ」を観る。ゲストは加藤和彦と坂崎幸之助。当然、ザ・フォーククルセイダーズに話題が向かうわけだが、2002年に坂崎氏を迎えて再結成していたのは知らなかった。そのころのわたしは辛うじて「帰ってきたヨッパライ」の7インチシング…

 「progress-eve」の巻

四人囃子をご存知だろうか。頭脳警察のバックも務めた、日本のプログレッシヴ・ロックを代表するバンドである。後期にはテクノポップな感じにもなったが、音そのものや曲の構成はプログレ洋楽な印象を受ける。ところで、プログレといえばやはりKing Crimson…

 「敗北宣言」の巻

テキストでコントを書かないのは、書けないから書かないのだ。「絶対これより面白いものってあるよな」という思いが頭の中を過ぎってしまい、途中まで書いたものをゴミ箱へ放り込んでしまう。そして、その対象は往々にしてスネークマンショーなのだ。スネー…

 「現実とは」の巻

小学生のころに首まで浸かっていたのがアメリカのTVシリーズ「X-FILES」である。サブカルチャーへ足を踏み入れ始めた時期とも言えよう。第5シーズンあたりから経済的な事情により(つまりビデオを全巻レンタルするだけの小遣いを持っていなかったために)だ…

 「ワーズワースの冒険」の巻

「ペンは剣よりも強し」とは人を抉るという行動に対して与えられた諺だろう。また、かの『葉隠』には「渇く時水を飲むやうに請合せて疵を直すが意見なり」とある。しかも不思議なことに(たった22年間の人生を思い返すと)、意見とは言われた側のほうが記憶…

 「気質と呪縛」の巻

MONKEY MAJIKの「Around the world」を試聴してそのまま買ってしまった。日本人にこの音は出せないだろうと思いながら聴いていたのだが(作詞作曲者が)カナダ人ということで納得。おもわず「カール・ダグラスかよ!」とつっこみを入れたくなる曲だが、こう…

 「高橋幸宏細見」の巻

Human Audio Spongeとかサディスティック・ミカ・バンド再々結成とかで何かと高橋幸宏氏をブラウン管越しに拝見することが多い。というか、今までに比べて多くなった。いつもながら服飾のセンスには惚れ惚れする。デザイナーなのだから当然といえば当然なの…

 「ロックンロール細見」の巻

そもそもロックンロールとは「Rock and Roll」と綴り、縦揺れと横揺れという意味らしい。アメリカのラジオDJが造った言葉だそうだ。Led Zeppelinにそのままの曲名があるが、これを聴く限りでもロックンロールはいわゆる「ロック」とは一線を画す存在であると…

 「以心電信」の巻

MPC1000というシーケンサ内蔵サンプラーを使い始めて丸一年になる。他にもシンセサイザーが二台あるのだが専らMPCで音楽を作っている。おそらく機能全体の二割しか使いこなせていないだろうが、触っているだけで楽しい。MPCシリーズと呼ばれるこのサンプラー…

 「腕前」の巻

深夜、「RYUICHI SAKAMOTO PLAYING THE PIANO/05」を観た。坂本龍一こと教授のソロ・ライヴであり、シンセやKaoss Pad、CDJといったディジタル機器ではなくアコースティック・ピアノフォルテのみで行うという、彼にしてみれば胎内回帰的なライヴである。最も…

 「ウワサの伴奏」の巻

なぜか今さらになって映画「ハリー・ポッターと賢者の石」を見た。地上波で放映されたときでさえ観なかったのに、何となくDVDを借りてしまったのだ。「ロード・オブ・ザ・リング」よりも基礎知識は必要ない(というより『ロード〜』が必要すぎるのだが、それ…